「働き方改革を取り入れて成功した企業の具体的な事例を知りたい」
「働き方改革を推進する取り組み、自社では何をすべきか、いまだに手探りしている」

そんなふうにお悩みでしょうか。

働き方改革関連法案は2019年4月からすでに施行され、導入している企業も数多くあります。
中小企業には一部猶予を持たせて適用されているとはいえ、法令上、2023年までには遅くとも何らかの改革に手をつけなければなりません。

しかし「どうやって課題を見出し、どのように改革を取り入れて、働き方の改善に成功したのか」という具体的なことに言及している企業は多くありません。

この記事では、働き方改革によって職場環境を改善させた企業の好事例5つをピックアップし、
・抱えていた課題
・行なった具体的な施策
・改善結果

の3つの観点から具体的にお話しします。

これから働き方改革を自社へ取り入れ、実践したいとお考えの方の参考になることでしょう。

1.「働き方改革」とは


各事例を紹介する前に、簡単に「そもそも働き方改革とはなんなのか?」を解説します。

1-1. 働き方改革の概要

現在、日本の労働環境においては
・長時間労働の常態化
・正規職員と非正規職員の賃金格差
・性別・年齢・国籍による就労の不自由

などの問題が生じています。

「働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにする」ことを目指すのが「働き方改革」です。

1-2. なぜ今「働き方改革」が必要なのか

現在、日本は「少子高齢化に伴う労働者人口の減少」「育児や介護との両立など、働く者の働き方に対するニーズの多様化」などの問題が起きています。
労働力の減少を補うため、設備投資などのハード面による生産性向上を目指すと同時に、限られた人材で効率良い労働力を引き出さねばなりません。

そのためには「就業機会の拡大」「仕事に対する意欲・能力を発揮できる環境を作ること」が重要であり、これらの課題を解決するために「働き方改革」は提唱されました。以来、国をあげて取り組んでいます。

2. 具体的な「働き方改革」導入・成功の好事例5選

「働き方改革」導入に成功した企業は、何を取り入れ、どのように改善したのでしょうか。
ここでは、いくつかの業種・企業ごとに、働き方改革の推進を行うにあたり

【抱えていた課題】
【何を行ったか(具体的に)】
【どう改善されたか】

を見ていきましょう。

*業種分類については、総務省「日本標準産業分類(平成25年10月改定)(平成26年4月1日施行)」大分類http://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/02toukatsu01_03000023.htmlによる

*「地域における「働き方改革」の促進に向けて 企業・地方公共団体における好事例集」
:2017年3月 内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/meeting/hatarakikata/h29-05-12-sankou8.pdf

2-1. クラウド型ITシステムの導入で老舗旅館が業界異例の週休二日を実現「陣屋」:宿泊業

「陣屋」は創業100年の老舗旅館です。
先代社長の他界等により経営者として就任した現社長と女将は、システム導入による業務効率化により2009年からの3年で黒字転換を実現しました。
しかし、業績は上がったものの、効率化の反動でスタッフの消耗は激しく、懸案の離職率は横ばいのままだったそうです。

現社長と女将は考え抜いた末、旅館業の常識では類を見ない「休館日」を設け、従業員に完全な休日を取らせるようにしました。
この施策で従業員の満足度は上がり、離職率も激減。心配された売り上げは休館日を設けたことでお客様がほかの曜日に分散したため変化はなく、その後の従業員のモチベーションアップにより顧客満足度が上昇、売り上げもさらに上がりました。

また、この改革を行う立役者となったクラウド型ホテル管理システム「陣屋コネクト」を同業他社に販売する子会社を設立しました。

これらの改革により、現在、「陣屋」グループ全体の売り上げは10億円を超えているそうです。

【抱えていた課題】

❶従業員満足度が低く離職率が高い
❷全体、部門間の情報共有方法が古く効率が悪い
❸パート(非正規社員)に頼ることで人件費比率が高く、非正規社員と正社員のスキル差によるサービス内容のばらつきが大きい
❹社員の休暇取得が難しい

・従業員満足度を向上させ、離職率を上げることが最大の課題。従業員が定着しなければサービス品質の向上が見込めず、顧客満足度を高められない。
・従業員満足度の低い背景には、旅館業界ならではの問題「休暇が取得しにくい」ことがあると気づき、改善を図ることになった。

【何を行ったか(具体的に)】

①休館日の設定
・旅館業界では異例の完全休館日を火曜日と水曜日に設け、従業員満足度が大きくアップした。

②業務効率化のためのシステム構築と利用
・自社に合わせて「陣屋コネクト」を開発し、従業員全員にタブレットを持たせ、勤怠管理から顧客情報の共有まで効率化。

③従業員の正社員化
・非正規社員と正社員のスキル差を埋めるため、部門ごとにバラバラの業務だけをするのではなく、一人の従業員が幅広く一人の顧客に対してサービスを行うマルチタスク制度を導入。
・正社員化を進めたことで従業員一人ひとりのスキルアップが叶い、顧客満足度を上げることにも成功。正社員化により離職率の低下にも成功

④有給休暇の取得推進
・「週休二日制度」を実施するため、月曜日も休みとし、連続した休みも取得しやすくした。

【どう改善されたか】(数字は2009年→2016年の変化)

(1)離職率が低下、人件費の削減達成
・正社員数   :20名→40名
・人件費比率  :50%→26%
・離職率    :33%→4%

(2)客当たり単価の上昇(顧客満足度の上昇)
・客当たり単価 :13,000 円→35,000 円
・売上     :2.9 億円→4.5億円

(3)平均給与の上昇
・従業員平均給与:288万円→398万円

(4)サービス品質向上への取り組みが活性化
・従業員による勉強会が自主的に開催されるようになった

(5)休館日設定による副次的効果の表出
・改装工事や設備メンテナンスを効率的に実施できるようになった。
・テレビや雑誌の撮影に休館日を使われるようになり収益の一手となった。

(6)システム構築と導入による副次的効果の表出
・クラウド型ホテル管理システム「陣屋コネクト」を同業他社へも外販開始。
・「陣屋コネクト」を扱う部署を子会社化。売り上げはすでにグループ全体の2割以上を占めている。

【「陣屋」の働き方改革成功のポイント】

●「旅館業は休んではいけない」という因習を、発想の転換で取りやめたこと
●専用システムの開発導入により業務効率化を図り、システム利用を全従業員に定着させたこと
●「陣屋コネクト」の開発運用と外販、休館日は施設や庭園を撮影に利用してもらうなど、常に新しい発想で事業を展開してきたこと

【参考・おもな実績】

「第2回日本サービス大賞「総務大臣賞」を受賞しました」
https://corp.jinya-connect.com/databox/data.php/topics_service-award_ja/code
「クラウド型システムの開発で老舗旅館を倒産から救う 宮崎富夫氏 元湯陣屋社長」
https://www.tkc.jp/cc/senkei/201502_interview

2-2. ワークライフバランスの改善で積極的に子育てをサポート「中外製薬」:製造業

中外製薬は、長時間勤務の常態化や子育て中の勤務体制の補助がうまく機能していなかったことから、残業の削減、有給休暇の取得の推進、柔軟な働き方の支援(在宅勤務制度、コアタイム短縮化、他)など、「従業員が働きやすい労働環境の仕組み作り」が課題でした。
また、近年では海外からの研究員の受け入れも増え、社内全体で多様な人種や言語を受け入れグローバルな視点をもつなど、ダイバーシティの推進も必要だったそうです。

働き方改革法案の施行を見据え、2013年ごろから少しずつ組織の仕組みと従業員一人ひとりの意識改革を進めました。仕事と生活、両方の「質」を向上させられるよう、組織全体の生産性向上を図った結果、厚生労働大臣より子育てサポート企業として「プラチナくるみん認定」*1を取得することができました。

【抱えていた課題】

❶組織と従業員、それぞれの「働き方改革」への意識づけの遅れ
・全社員の意識改革の推進が必要

❷社員一人ひとりのワークライフバランスが悪くそれぞれの推進が必須
・長時間労働の是正
・年次有給休暇の取得
・働きやすい環境の整備

❸ダイバーシティ推進の必要性
・グローバル化に対応できる年齢・性別・国籍に垣根のない組織編成、働き方そのものの改革推進が必要

【何を行ったか(具体的に)】

①働き方改革を浸透させる取り組みと、「働き方改革プログラム」の実施
・職場における現状と理想のギャップを埋めるため、人事部・労働組合から個別にヒアリングを行い、好事例は社内に周知する。
・外部コンサルタントによる「働き方改革プログラム」を導入し3ヶ月間実行。プログラム終了後には成果発表を行い、働き方改革の効果について共有する。

②社員一人ひとりのワークライフバランスの改善
・長時間労働の削減に向けた取り組み
各部門で時間外削減に関するKPIを設定し、職場ごとに推進策を策定。定期的に人事部から各部門へ労働時間実態のフィードバックをし、時間外労働に対する全社への意識付けを行う。
・年次有給休暇の取得
年次有給休暇、個々人がフレキシブルに取得することができるフレックス休日、アニバーサリー休暇を設定。積極的な取得に向けて社内で呼びかけを行う。
・働きやすい環境の整備
柔軟な働き方(在宅勤務制度、フレックスタイム制度、等)の導入。育児、介護、海外との電話会議、通院治療等の事情により在宅勤務が必要と認められた者には、月あたりの日数を定めて在宅勤務を認めた。

③ダイバーシティの推進
・海外からの研究員の受け入れにあたり、社内全体で多様な人種や言語を受け入れる受け皿づくりのため、会議によって「議事進行と資料全て英語」「資料のみ英語」など英語の使用を増やした。

【どう改善されたか】

(1)働き方改革の浸透
・有給休暇や育児休暇の取得率が上がった。

(2)ワークライフバランスの改善に効果が表れる
・所定外労働時間の減少
-組合員の月平均残業時間:前年比-0.6時間
・年次有給休暇取得率の増加
-全社平均取得日数は前年比+1日

(3)ダイバーシティの推進
・会議での英語使用率が上がったため社員が意識的に英語を学ぶようになった。

【「中外製薬」の働き方改革成功のポイント】

●時間をかけて少しずつ準備を進め導入したこと
●経営陣、管理職、従業員それぞれが「働き方改革」による組織改革と同時に、個々の「働くこと」に対する意識改革を図ったこと
●全社で情報共有し、フィードバックを定期的に行ったこと

【参考・おもな実績】

「中外製薬のダイバーシティは、いま」 
https://www.chugai-pharm.co.jp/csr/past_report/feature/2015_01.html
「働き方・休み方改善ポータルサイト」中外製薬 
https://work-holiday.mhlw.go.jp/detail/04197.html
「厚生労働大臣より子育てサポート企業としてプラチナくるみん認定を取得」*1
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20180829150000_739.html

2-3. 一人ひとりが働き続けやすい職場を整え離職ゼロに成功「長岡塗装店」:建設業

「長岡塗装店」は昭和13年創業の、愛媛県松江市にある「塗装業」の企業です。
塗装の技で古い町並みの残る松江の建築物の保護と景観の形成を通じ、地域社会の発展に貢献してきました。

塗装作業は「3K」または「5K」(若者に人気のない職場の条件を表す言葉。「危険」「汚い」「きつい」+「暗い」「臭い」の頭文字)と呼ばれる過酷な現場です。
また塗装は建築現場の最後の工程のため、他の全ての工程の遅れがしわ寄せとしてのしかかります。そのため長時間の無理な労働が課せられるのが日常茶飯事でした。
現社長が働き方改革に取り組む前は離職率も高く、技術の継承や、現場への安定した職人派遣も難しかったようです。

先代から事業を引き継いだ、先代社長の娘婿である現社長は「社員一人ひとりの幸せの延長線上にこそ必ず会社の繁栄がある」と考え、すでに1998年から「65歳までの高齢者継続雇用制度を導入する」など、長期的な視点でワーク・ライフ・バランスの実現に力を入れてきました(現在はさらに改善)。

さらに「働き方改革」が国策で推進されるようになってからは助成金を申請、有効利用し、従業員それぞれのニーズに対応できる体制を作り、離職率をゼロにすることに成功。助成金は若年職人の資格取得などに有意義に使われ、仕事の質が上がることで顧客からも喜ばれ、受注が増えました。

【抱えていた課題】

❶若手の早期離職による技術継承の危機
❷長く働き続けられる職場づくりができていない
❸技術ある高齢者を再雇用する仕組みができていない
❹改革を継続的に行うための資金をどうするか

【何を行ったか(具体的に)】

①正社員化を進め、離職率ゼロを目指す。若手の資格取得をバックアップする。
②育児・介護などと仕事の両立を支援。社員一人ひとりのニーズに応える制度を整備し、「働き続けたい会社」づくりへ邁進した。
③技術のある高齢者や女性の積極的採用を推進。高齢者の採用年齢、定年制度の見直しを図った。
④各種助成金を申請し、一連の改革へ有効活用した。

【どう改善されたか】

(1) 若年社員の確保と離職率の低下、正社員化の推進
・8年間退職者(離職者)ゼロを達成
・正社員(従業員数)は 12 年間で 1.6 倍増加

(2) 「働き続けたい会社づくり」の徹底。「3K」「5K」からの脱却へ。
・有給休暇とは別に、30分単位で看護休暇取得可能に。
・社員本人または配偶者の出産祝い金10万円を会社から贈呈。
・認可無認可を問わず保育料の3分の1を会社から補助。
・育児や看護のための始業および終業時間の繰り上げ繰り下げを可能に。
・技能士等の国家資格取得の経費の補助を行い、取得した国家資格数が倍以上に増加。
*他にも取り組み多数

(3) 仕事の質の向上と職人一人一人のスキルアップ、モチベーションアップを実現
・島根県発注工事成績 2010・2011 年、4位にランクイン。
・資格取得者の増加と指導者の充実を図り、有資格者が 12 年間で 3 倍に増加した。

(4) ダイバーシティ推進と積極的取り組み
・女性社員の活躍する職種を拡大(現場監理者、在庫管理者、カラーシュミレーション担当者など)。
・70歳までの継続雇用制度を設置し、若手への技術継承を図る。

(5)助成金の活用
助成金を活用したことで「働き方改革の達成」をさらに意識できた。

【「長岡塗装店」の働き方改革成功のポイント】

●「働きたくなる職場づくり」のために、徹底的に従業員の意見を汲み上げ、改善できるところから実行したこと
●仕事を通じた地域への貢献、丁寧な仕事ぶりやボランティア活動などにより、リピーターを育て地域との密接なつながりを作り、より強固にすることで信頼と請け負う仕事を増やしたこと。またそれにより職人、従業員に仕事へのプライドを持たせ、モチベーションを上げることに成功したこと
●技術のある高齢者や女性の採用基準(年齢制限など)を緩やかにしたこと(ダイバーシティの推進)
●働き方改革助成金を申請し、最大限有効に利用したこと

【参考・おもな実績】

https://www.nagaoka-toso.co.jp/about(会社HP)
「長岡塗装店~3K・5Kの現場を変えた経営改革」
https://www.attax.co.jp/sp_column_sakamoto/0133/
経団連資料「長岡塗装店」
https://www.keidanren.or.jp/policy/2015/083/91027.pdf

2-4. 過去に処理された 40 万点以上の情報をデータベース蓄積、社員の経験による暗黙知を“見える化”「株式会社ハッピー」:生活関連サービス業

「株式会社ハッピー」は衣類再現加工「ハッピーケアメンテ®」サービスを提供しています。
既存のクリーニングでは対応できないと言われる汚れに侵された衣服や、特殊な生地で作られた高級衣料品類を、新品同様に蘇らせる衣類再現加工を提供しています。

「株式会社ハッピー」の経営者の理念は、「社員に無理をさせない労働環境を維持すること」。その理念を実践するために

・ムリ(従業員を無理に働かせること)
・ムダ(二度手間になる工数の無駄のこと)
・ムラ(品質のバラつきのこと)

を徹底的に省くことに注力しています。

そのため、各工程に ICT システムを導入し「電子カルテシステム(別名:おもてなし IoT)」という基幹システムでコントロールするようにしました。
このシステム化により、過去に請負った 40 万点以上の情報を蓄積しています。
また、「技能のレベル」「経験」という「見えないもの」を「見える化」し、公平に判断や評価が行えるようにしたのが「株式会社ハッピー」の働き方改革、最大の特徴です。

【抱えていた課題】

❶顧客情報の管理の脆弱さ
・これまでに積み上げてきた数十万点に及ぶ業務のフローや顧客対応が、次の顧客への対応や請け負った仕事へ、十分に生かされていない。
・顧客一人ひとりの情報管理ができておらず、前回請け負った仕事から顧客の好みや傾向を共有できていない。

❷長時間労働の常態化
・仕上げ工程で、依頼品の「数」のみで一日の「作業目標」を設定していた。そのため

「難易度」の高い衣服が集中すると必然的に残業時間が増える
→疲れから、作業効率も落ち、仕上がりの品質が低下する
→クレームが入り再度やり直しが必要、さらなる時間を要する

…という悪循環が置き、長時間労働の常態化を起こしていた。

❸スキルを公平に判断することができない
いわゆる職人の「経験値」は万人に見えるものではなく、そのままでは共有できない。
どの依頼品が難易度が高いのか、誰が技能レベルが高いのか、具体的に、皆が納得する公平な判断・評価基準がなかった。

【何を行ったか(具体的に)】

①IT利用による顧客情報と工程プロセスの一元管理
・顧客の個人情報、利用履歴、顧客への対応、現在の注文と対応の状況など、全てをデータベース化し、一元管理することを徹底した。
・顧客の依頼品が今どの工程をたどっていて仕上がりまでに何日かかるのかも、過去のデータや依頼品の情報から割り出し、開示できるようになった。

②“ムリ・ムダ・ムラ”をなくし、作業時間を徹底して短縮
・独自の洗浄技術を開発して工程そのものを短縮した。
・依頼品の「難易度」を「経験値」でその都度判断するのではなく、「数値」でパターンごとに細かく表すことにした。ポイント化することで、作業にかかる時間や誰が担当すべきかなどを迷うことなく判断できるようになり、効率が上がった。

③技術の標準化で、従業員の能力を公平に評価
・それまでは「作業時間だけ」で判断していた技能の練度を、難易度のポイント化により「何ポイントの難易度の品物を、何時間で終わらせたか」という2つの評価基準で点数化できるようになった。
・ある一定の評価点数に達すると技能力テストを受ける資格が与えられ、合格することで給与の等級が上がる仕組みをつくった。

【どう改善されたか】

(1)業務効率が飛躍的に上がった
・業務の効率化が図られたことで、無駄がなくなり、工程管理がスムーズに進むようになった。
・依頼を受けた商品が最短の必要十分な時間とクオリティで顧客の元へ顧客満足度がアップした。

(2)長時間労働の抑制が可能になった
・各工程を最適化することで、メインとなる作業現場での生産性を高めた。一方で、受付等の庶務業務にかかる時間を可能な限り短縮できた。全体として無駄のない工程が実現し長時間労働が減った。
・社員全体の所定外労働合計時間は
6,654 時間 30 分(2009年度)➡3,451 時間 15 分(2015 年度)
と、おおむね半減している。

(3)従業員のモチベーションが上がった
・技能力をポイント化し、「見える化」し、それが評価につながって給与が上がる仕組みを構築することで、社員それぞれのモチベーションが上がり、自主的に技能の向上に向け努力をするようになり、職場が活性化した。

(4)特に女性の平均給与が上昇。離職者の減少、売上高の増加が成った
・2015年度の女性社員の平均給与は386万円。サービス業に従事する女性の全国平均値(333万円)より上回っている。
・2013年度、2014年度はそれぞれ6名、3名の離職者があったが、2015年は0人だった。給与所得の上昇と客観的な評価により公平性が保たれ、社員のモチベーションが上がっているからと分析されている。
・技能を持つ人材を長期にわたって確保できるようになり、純営業利益は
2009年度:570万円➡2015年度:2700万円
と大幅に増大した。

【「株式会社ハッピー」の働き方改革成功のポイント】

●顧客の情報を徹底して管理し、無駄をなくし、サービスを充実させ質を上げたこと
●ITの活用により、業務の「可視化」「効率化」「公平化」を徹底したこと
●業務を「属人化」から「標準化」し、従業員の技能を客観的に評価できる仕組みをつくったこと。それにより従業員のモチベーションをアップできたこと。

【参考・おもな実績】

https://www.kyoto-happy.co.jp/(会社HP)
経産省「第1回日本サービス大賞」優秀賞受賞
経産省「中小企業IT経営力大賞」経済産業大臣賞(大賞)他多数
認定・受賞一覧 https://www.kyoto-happy.co.jp/corporate/company/winning/

2015年業種別平均給与 https://doda.jp/guide/heikin/2015/gyousyu/

2-5. シングルマザーや障害者の雇用促進、飲食業界異例の残業ゼロ達成。常識を打ち破る発想力の成果「国産牛ステーキ丼専門店「佰食屋」(株式会社minitts)」:飲食サービス業

国産牛ステーキ丼専門店「佰食屋」は、一日100食限定の定食屋です。食材ロスをなくす、定時に帰れるよう100食売り切りにする、値段は主婦目線に抑え、接客のクオリティを上げるなど、従来の飲食業界では非常識と言われていたアイデアを実行し、京都に3店舗を構える人気店になりました。

こちらの女性社長の経営方針は「常に顧客目線であること」から着想を得ているそうです。
また「従業員はお客様のことを第一に考え、経営者は従業員のことを第一に考える」ことをモットーとしているそうです。
従業員とお客様にとって「何が大切か」「何が必要で、何が不要か」常に自らに問いかけることで、現在の経営の形を作り上げました。
会社経営は初めてでずぶの素人だったため、最初はアイデア自体を専門家に酷評されることもあったそうですが、着実に顧客の満足度と従業員の満足度を上げることで業績を上げ、現在までに多くの賞を受賞しています。

【抱えていた課題】

❶「食材の無駄を出さない」ための見直し
・食材ロスをなくすための取り組みは開店当初からの課題だった。
飲食業界では長年の常識である「食材は捨てるのが当たり前」という意識を変えたい、食べ物を粗末にしたくないという想いから、無駄をなくすために経営の試行錯誤が必要。

❷従業員ファーストのための見直し
・従業員全員に定時退社をさせることはできないのか。
「飲食店従業員は長時間残業が当たり前」という、これも長年の業界の常識から従業員を解放するにはどうすればいいのか、こちらも試行錯誤が必要だった。

❸顧客ファースト徹底のための見直し
・お客様に満足していただくために経営者と従業員ともに、何をすべきか。
・美味しいものを安く提供するためにどういう経営モデルが必要か。

【何を行ったか(具体的に)】

①食材ロスを徹底的になくす取り組み
・仕入れは、肉は丸ごと一頭で全て使いきる。
・1日100食に限定することで1日で使う食材を管理する。冷凍庫は置かない。
・無駄を出さないことで料金を可能な限り抑えるプロセスを構築。

②従業員の満足度を上げる取り組み
・「定時に帰れる」ことを徹底する。その日の食材を売り切り、賄いを食べ終わったら店を閉じ営業は終了とする。この流れの徹底を図っている。
・従業員の雇用に制限はない(ダイバーシティの推進)。障害者、高齢者、シングルマザーなども積極的に雇用している。

④顧客満足度を上げる取り組み
・食材ロスや人件費の無駄をなくす取り組みにより、お客様へ美味しいものをできるだけ安く提供する価格設定をした。
・従業員一人ひとりが、お客様が居心地よく過ごすために何をすべきか考えるようになった(これは社長の指示ではなく、従業員満足度をあげた結果の付随効果とのこと)

【どう改善されたか】

(1)ブランド力のアップ
・経営効率を上げるため「100食限定」を始めたが、口コミ、SNSによる拡散で評判を呼び、1日100食を毎日ほぼ売り切れるようになった。

(2)従業員の満足度アップ
・従業員が残業などもなく休日も取れるため、満足度が高く、顧客のために何をすべきか積極的に考えてサービスを行うなどの良い効果が出ている

(3)顧客の満足度アップ
・価格設定や新鮮な食材の利用、また従業員からの丁寧なサービス、「限定」によるレアリティ効果により、顧客の満足度を高め、維持できている。そのため1日100食はほぼ毎日売り切れている。
・上記理由から多くのリピーターがつき、多店舗展開している現在も業績は上がっている。

【「国産牛ステーキ丼専門店「佰食屋」」の働き方改革成功のポイント】

●「食材は捨てるもの」が常識だった飲食業界に素人目線で乗り込み、「食材を捨てない」「無駄にしない」信念を実行し、経営効率、資金の運用効率をアップできたこと
●「飲食業界では定時帰りはできない」という常識を打ち破り、従業員が定時に帰れることを徹底して従業員満足度をあげていること
●売る数を限定することで経営効率を上げると同時にブランド力を高めたこと
●「ダイバーシティ推進」が叶えられていること(従業員の雇用に年齢は不制限。シングルマザー、障害者も雇用している)

【参考・おもな受賞実績】

会社HP https://www.100shokuya.com/
日経WOMAN ウーマン・オブ・ザ・イヤー大賞受賞
Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2018 新規ビジネス賞受賞
新・ダイバーシティ 経営企業1 0 0選に選出
京都市 真の「 ワーク・ライフ・バランス」推進企業の特別賞受賞
第32回人間力大賞 農林水産大臣奨励賞受賞 他多数

3. 「働き方改革」導入のポイント7つ

あなたの会社がこれから働き方改革の理念や具体策を導入する場合、おさえておきたいポイントをお伝えします。
2章で紹介した企業が、働き方改革の導入にどのように成功したのか、その背景も踏まえて述べていきます。

3-1. ゴールイメージを書き出す

「働き方改革」の最終的な目標は「社員の幸せ」「会社の成長」の両立です。
しかし、もっと具体的な目標、「ゴールイメージ」を実際に書き出してみることが大切です。

「社員の幸せ」には「残業が多すぎない」「有給休暇が取りやすい」などの働く環境としての「仕組み」は勿論必要です。
しかし「幸せ」を感じるには、仕事を「楽しい」「やりがいがある」と感じられる、仕事そのものへのモチベーションが上がるような「仕組み」作りも必要です。
従業員に両方が揃って「会社の成長」は成しえると考えられます。

これらをふまえて、「どうなれば、社員の幸せと会社の成長が両立できたと言えるのか」を具体的に書き出しましょう。

例えば事例で見ると、「長岡塗装店」がわかりやすいと思います。
社長の願うことは最初から「従業員が働き続けたいと思える会社を作る」ことでした。
そこから、「従業員が働き続けたいと思うには、どんな条件が、どんな制度が必要なのか?」と具体的に落とし込んでいったのです。

この事例からも分かるように、働き方改革の「ゴールイメージを描く」のは経営者ですが、その「ゴールイメージ」は、従業員、社員の目線で考えなければなりません。
「会社の売り上げを上げたい」「有名な会社にしたい」というものではなく、「従業員のためになること」に特化してイメージしてください。

3-2. 課題を洗い出し、改善のための最優先事項を絞り込む

ゴールイメージに続いて、現状の具体的な問題点、課題を見つけ出し「改善するためにどうすべきか」方策を組み上げます。
最も優先して改善すべき事項から順に手をつけていきましょう。

紹介した例の中では、中外製薬が非常に細かく、問題点の洗い出しと改善のための道筋を示し、実行しており、わかりやすいと思います。

例えば、2016年9月27日に「働き方改革」の「実現会議」(議長・安倍晋三首相)初会合が首相官邸で開かれています。このあたりから本格的に働き方改革が進められるようになったと考えられますが、中外製薬が従業員の環境改善に取り組み始めたのは2013年のことです。そこから時間をかけて社員のヒアリングを行い、問題点を洗い出し、外部から講師を呼び講習を行うなど、社内全体の意識改革を少しずつ進めていきました。
また、「改善のためにどうしたら良いのか」について「理想ではなく現実的な案を出し、実行する」地に足のついた改革を行なっています。

このような、「できること、できないことを見極めて実行する」のは簡単に見えて実は大変な作業です。多くの部署がお互いに声をかけあって現在の体制や制度が実現していることが、中外製薬HPや厚生労働省の紹介ページなどからもわかります。

3-3. 助成金を活用する

働き方改革を推進するためには投資が必要な場合もあります。この場合、特に中小企業では国や地方自治体の助成金を積極的に利用すると良いでしょう。

例えば、以下のような助成金があります。

「助成金のご案内」(厚生労働省) 「時間外労働等改善助成金」「業務改善助成金」「キャリアアップ助成金」などが用意されている。

https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/subsidy.html

働き方改革助成金(東京都)

*「東京しごと財団 雇用環境整備課」
https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/boshu/hatarakikata.html
「TOKYO働き方改革宣言企業に対し、企業等の働き方改革を推進するため、新たに導入した制度において、助成要件を満たした利用実績があった場合に助成金を支給いたします。」(HPより抜粋)

http://www.hataraku.metro.tokyo.jp/hatarakikata/kaikaku/jyoseikin/index.html

助成金を有効利用して働き方改革を推進した事例としては、2章の「長岡塗装店」があります。

自社の属する地方自治体のHPで助成金を調べ、利用できる条件が揃っているか、担当者に直接話を聞いてみて下さい。

3-4. ITを活用して業務の「可視化」「効率化」を目指す

業務の効率化は「働き方改革」の重要なポイントです。業務を可視化し、情報を全員で共有することができます。

2章で紹介した企業にも、ITの活用による成功例がいくつかありました。
中でも「株式会社ハッピー」が業務の「可視化」「効率化」を徹底追求し、改善させた好事例でしょう。

業務効率化のためには、現在は顧客・業務管理運用システムは必須となっています。
もしもこれまであなたの会社が全くITを活用してこなかった場合、定着せず計画倒れになる恐れがあるため、導入のタイミングには注意が必要です。

例えば同業他社の成功事例を参考にするため視察に行く、管理システム会社の担当者から話を聞くなど、少しずつ経営陣が「業務効率化」の実現を目指し、「仕方なくやる」のではなく「積極的にやると決め、行動する」ことが肝心です。

3-5. 常に柔軟な考え方で対応する

働き方改革を推し進めるためには、従来からある「こうでなければならない」という考え方にとらわれないことが非常に重要と言えます。
新しい発想が思いもよらなかった良い効果を生むこともあります。
働き方改革の導入に成功した事例は、全てこの「業界の常識、これまでの常識を打ち破る」発想をし、実行しています。

例えば、2章で紹介した「国産牛ステーキ丼専門店「佰食屋」」の「食材ロスをなくす」取り組みが好例でしょう。
「食材は捨てて当たり前」という、それまで「飲食店業界の常識」と言われていたことと全く反対の取り組みでしたが、大成功。他にも「深夜残業が当たり前」から「定時に帰れるよう100食売り切りにする」など、従来の飲食業界では非常識と言われていたアイデアを次々に実行し、売り上げを伸ばしています。

古い因習や考え方に囚われていると、新しい発想は出てきません。
社員全員から「職場環境の改善のためにどうすればいいか」、常に新しい発想を募ることも必要でしょう。

3-6. 仕組み変更をするなら、朝令暮改は厳禁

トップダウンで現場の仕組みを変化させることは、一時的にせよ従業員に多大なストレスを与えます。何かを変えるなら、すぐにそれを止めてしまうなどの朝令暮改は厳禁です。

例えば、それまでが全社的にアナログで属人的な業務進行だった場合、そのやり方に慣れている従業員ほど、効率化のためにのクラウド型管理システムを導入することに抵抗を示すでしょう。
それでも管理運用システムがうまく定着すれば、業務効率が飛躍的にアップするのは間違いありません。
何故それを導入するのか、導入することでどんな改善が見込めるのか、従業員本人にどんなメリットがあるのかを可視化して、従業員に納得してもらうことが大切です。

この事例としては「陣屋」が最もわかりやすいでしょう。
先代までは顧客の要望などを紙に手書きし、情報共有は従業員同士による口頭での申し送りのみだったそうです。そのため、ミーティングに無駄な時間がかかり、その割には伝え損ねからトラブルが発生していたそうです。
現社長はシステムを導入し、顧客情報を一元管理するよう仕組みを変えました。現在はタブレットを全ての従業員が使いこなしていますが、最初は(特に高齢の従業員は)慣れるまで大変だったそうです。
途中で諦めず、根気よく、少しずつ仕組みの変更に慣れてもらったことで、現在の「陣屋」の成功があると言えるでしょう。

仕組みを変える時には、経営陣には「成功すると信じ、絶対に退かない」強い意志が必要です。そのためには改革のための知識を増やすこと、同業他社の成功例のリサーチなどが欠かせないと心得て下さい。

3-7. 個人からでもできる「働き方改革」

この記事では主に経営者や中間管理職の方々、これから「働き方改革」を自社へと浸透させようとしている方を念頭に置いています。働き方改革は従業員全員のためのものであり意識改革ですが、実際に制度を決めて運用をするのはどうしてもトップダウンになるからです。

しかし、社員個人にも「働き方改革」を推進することはできます。
例えば「帰ります宣言」。定時に退社すると「仕組み」は決められても、それが実行されなければ何も変わりません。この「仕組み」を「動かす」ためには、社員一人ひとりがお互いに声を掛け合い、この制度を理解し、自分たちのために変えていこうという心がけが必要です。

「私は●時に帰ります」と見えるところに掲示することで、「この人は●時に帰るんだな」とお互いに周知することができます。
また、宣言することでその時間までに業務を終わらせるにはどうしたら良いか、業務効率を考えて仕事することになります。

「ボトムアップ」である個人の意識改革や実践も、働き方改革導入成功のためには、必須の要素と言えるでしょう。

4. まとめ

「働き方改革」を取り入れ改革に成功した事例について、具体的に見てきました。

ここまで読んだ方は、すでに、働き方改革を自社で成功させるためには何が必要なのか、具体的なビジョンが描けていると思います。

経営者は従業員の目線で考え、従業員は自分の問題として考えること
何よりも、この視点が必要ではないでしょうか。

この記事があなたの会社の「働き方改革」成功への道しるべのひとつとなれば幸いです。

<参考資料>

「「働き方改革」の実現に向けて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html

「企業・地方公共団体における好事例集」(内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/meeting/hatarakikata/h29-05-12-sankou8.pdf

横溝 龍太郎

この記事の監修者

横溝 龍太郎 レッドフォックス株式会社 COO

本コラムは、ビジネスパーソンを「働くを、もっと楽しく」するためのアイディアの情報発信しています。
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