CRMをひと言で説明するなら、
「顧客情報を一元管理して、営業活動や優良顧客の育成をサポートするITツール」
と言えるでしょう。
従来は営業マンがそれぞれに管理していた顧客についての情報や対応の履歴などを、CRMツールで一元管理することで、部署内で共有し、営業戦略に活かせるようになるのです。
この記事では、そんなCRMについて、
◯言葉の詳しい意味
◯ツールの役割や機能
◯導入メリット
などを、わかりやすく詳しく説明していきます。
さらに、
◯SFA、MAなど類似のものとの違い
についても、CRMと比較して解説します。
これを読めば、CRMについての基本的な知識をすべて知ることができ、もし人から「CRMって何?」と聞かれても自信を持って教えてあげられるようになるはずです。
最後までぜひ目を通してください!
1 CRMとは何か
CRMとは何なのかを理解するために、まずは言葉の意味、定義を説明し、それから「何のために使われるのか」「どんな機能があるのか」について掘り下げていきましょう。
1-1 「CRM」の意味
「CRM」とは、「Customer Relationship Management (カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)」の頭文字をとった略語です。
直訳すると「顧客関係管理」。
ですが、実際の意味は単なる「管理」にとどまらず、顧客との関係をよりよく保ち、信頼を築き、末長くその企業のサービスや商品などを利用してくれる優良顧客へと育てるための戦略や経営手法のことを指します。
もっと具体的にいえば、「顧客の性質、要望、過去の取引履歴、ニーズなどを深く理解し、それぞれの顧客に最適な商品やサービスなどを提供する」ということです。
たとえば、商品1、2、3を販売している企業があるとします。
もしどんな顧客に対しても、ただ定型的に3商品をお勧めするだけであれば、そこにCRMは存在しません。
そうではなく、
「顧客のA社は、以前から商品1を継続的に買ってくれているが、それを改良した新商品2が出たので、今度はこちらをお勧めしてみよう」
「顧客B社は、先日『商品1の機能だけでは足りないので、さらに◯◯機能が備わったものがあるといいのだが』と言っていた。 商品3には◯◯機能があるので、その説明資料を作って送ってみよう」
といったように、「顧客が求めているものは何なのか」を分析し、より満足してもらえるようなアプローチをするのがCRMの考え方なのです。
ただ、現代では顧客のニーズも多様化・複雑化しているため捉えにくくなっているのが問題です。
数多くの顧客について、それぞれのニーズ、取引履歴などの膨大な情報を記録し、分析する必要が出てきたのです。
そこで、CRMのためのITツールが誕生しました。
顧客の情報を集積・管理し、分析して、適切な営業アプローチへと導いてくれるツールです。
これを「CRMツール」「顧客管理ツール」などと呼びますが、転じてこのCRMツール自体を「CRM」と称する場合もあるのが現状です。
まとめると、CRMとは、
1)顧客情報を管理・分析することで、顧客それぞれのニーズに最適な商品やサービスを提供する経営手法
2)1)を実現するためのITツール。CRMツール、顧客管理ツール
となります。
この記事では、
2)の「CRMツール」について、知っておくべき基礎知識を詳しく解説していきます。
1-2 CRMの役割
CRMツール(以下CRM)の基本的な役割は、
「営業活動によって獲得した大切な顧客に関する、膨大な情報(取引履歴、連絡履歴、要望やクレームなど)を集積・管理する」
ことと言えます。
が、現在ツールベンダー各社からリリースされているCRMは、単なる「顧客管理」からさらに一歩踏み込んで、
「顧客を長く取引が続く優良顧客へと育て、アップセル、クロスセルを目指すために、顧客データを分析し、最適なタイミングで最適なアプローチをかける」
という「顧客育成」までを担うようになってきました。
これらのCRMを利用することで、
◎顧客の情報や取引履歴、対応履歴などを一元化して整理、管理する
◎営業マンが個別に持っている顧客情報を集約・分析する
◎分析結果をもとに、各顧客にとって最適なタイミングで、メールマガジンを配信するなどの最適なアプローチをかける
といった業務を自動化することができるのです。
1-3 CRMの主な機能
CRMツールは数多くリリースされていますが、その主な機能は以下の6つに集約されます。
1)顧客情報管理・対応履歴管理
2)顧客データ分析
3)マーケティング支援(メールマガジン配信、SNS連携など)
4)キャンペーン管理
5)カスタマーサポート機能(アフターサービス、問い合わせ管理)
6)基幹システムとの連携
それぞれについて簡単に説明しましょう。
1)顧客情報管理・対応履歴管理
顧客の企業情報などの基本データはもちろん、メールや電話、訪問などの連絡・対応の履歴や、顧客の要望、クレームにいたるまで、顧客に関するさまざまな情報、データを集積して一元管理します。
2)顧客データ分析
集積した顧客データをもとに、顧客の購入傾向やニーズなどを分析、レポート化します。
3)マーケティング支援
分析結果をもとに、顧客ニーズに合わせてメールマガジンを一斉配信したり、SNSから自社製品やイベントなどへの反応を抽出するなど、マーケティング活動をより効果的に行うためのサポートをします。
顧客満足度を測るため、アンケートフォームの作成・集計機能を備えたものもあります。
4)キャンペーン管理
顧客に対して最適なタイミングで最適なアプローチをするための計画=キャンペーンについて、企画の立案から実行、効果計測などを自動化・サポートします。
また、セミナーやイベントなどの管理にも役立ちます。
5)カスタマーサポート機能
CTIなどの電話システムと連携して顧客情報をPC上に瞬時に表示したり、サポート案件を管理するなど、カスタマーサポートを効率化します。
6)基幹システムとの連携
会計システムや在庫管理システムといった他の基幹システムとデータを連携することで、システムごとにデータを入力・参照する手間を省き、情報をより広く活用できるようにします。
ただし、すべてのCRMがこの6機能を備えているわけではないので、導入を考える際にはまず自社の業務に必要な機能が過不足なく備わっているツールを選びましょう。
2 CRMの導入メリット
CRMの役割である「顧客それぞれの情報を集めて分析し、ニーズを把握して最適な営業活動をする」ことは、従来は営業マンが個々に行なっていたものです。
人間がアナログで行うことができる業務を、コストをかけてまでITツールに任せるメリットがあるのでしょうか? もちろんです。 CRM導入によるさまざまなメリットを、以下に説明していきましょう。
2-1 顧客情報を一元化・データベース化できる
従来は、営業マンそれぞれが担当する顧客の情報を集めて管理していました。 そのため、見込み顧客に重複してアプローチをかけてしまったり、「同業種の顧客情報をまとめて見たい」「複数社の取引履歴を比較したい」などと思ってもデータを集めるのに手間がかかったりという難点がありました。
しかし、CRMを導入すれば、すべての情報を一元管理することができます。
すべての顧客情報がデータベース化されるため、誰でも必要な情報にアクセスすることが可能になり、さらに「◯回以上の購入履歴がある顧客」「商品Aを購入済みの顧客」といった条件での検索・抽出も簡単にできるようになります。
顧客管理に関する業務が格段に効率化できるというわけです。
2-2 顧客に最適なアプローチができる
営業マンごとに顧客情報を管理している場合、「この顧客のニーズは何か」の分析や、「どんなアプローチが有効か」といった戦略なども属人化しがちです。 そうなると、営業マンの能力によって、成果に大きな差が生じる危険性があります。
一方で、CRMを利用すれば客観的なデータ分析ができます。 個々の顧客について分析するだけでなく、集積された膨大な顧客データ全体をもとに、確度の高い成功パターンや失敗パターンを導き出すことも可能なのです。
これにより、営業マン個人の能力差を補えるというのも大きなメリットです。
2-3 PDCAサイクルを適切に回すことができる
業績向上のために、PDCAサイクルによる業務改善を図っている企業も多いでしょう。 CRMは、このPDCAにも有効です。
一元化された顧客データの中には、過去の「P=Plan(計画)」と「D=Do(実行)」の情報が蓄積されています。
それを分析し「C=Check(評価)」することで、次はどんな「A=Action(改善)」が適切なのかが明確に見えてくるのです。
CRMの中には、AIを搭載して次のアクションについてのアドバイスまでしてくれるものもあります。
2-4 社内業務を効率化できる
CRMは、日々の事務作業などの社内業務も効率化してくれます。
具体的には、適切なタイミングで適切な顧客にメールマガジンを配信したり、顧客アンケートを集計したり、レポートを作成したりといった煩雑な作業を自動化することができるのです。
これにより、営業マンは営業活動と顧客育成に集中できるようになるでしょう。
3 CRMと類似ツールとの違い
現在のビジネスシーンでは、CRM以外にもさまざまなITツールが導入され、営業活動に役立っています。
その中には、CRMと役割や機能を混同されやすいものもあります。
そこでこの章では、CRMと類似ツールとの違いをわかりやすく解説していきましょう。
3-1 CRMとSFA・MAの違い
CRMは、大きくは「営業支援ツール」の一種として分類されます。
営業支援ツールとは、企業の営業活動をより円滑に効率よく、効果的に行うため、ITでサポートするためのもので、主に「CRM」「MA」「SFA」の3種が知られています。
これらは役割や機能に重複する部分があり、混同されることが多いので、まずはこの3種の違いから説明しましょう。
これら3種のツールは、「企業の営業活動のどのフェーズで使われるか」によって区別されます。
順番に説明すると、
①MA(マーケティングオートメーション) → 見込み客の獲得から選別までをサポートするツール
②SFA(セールスフォースオートメーション) → 主に、実際の営業活動のスタートから受注・顧客化までをサポートするツール
③CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント) → 主に、受注から顧客化以降をサポートするツール
となります。
それぞれが使われるフェーズと役割、機能の違いは以下の図の通りです。
ただ、ツールの機能は明確に区別されているわけではありません。
顧客管理は主にCRMの役割ですが、SFAツールの多くは顧客管理機能を備えているなど、ツールによって重複する部分もあります。
3-2 CRMとCTIの違い
CTIとは、Computer Telephony Integrationの略で、電話やFAXをコンピュータと連携したシステムを表します。
コールセンターなどでよく利用されています。
顧客からの着信履歴や通話内容などを記録し、着信があれば顧客情報をコンピュータ上ですぐに検索、表示できるという機能を持つため、「顧客情報や連絡履歴を管理する」という点ではCRMと共通しています。
しかし、CTIは電話でのコミュニケーションに特化しているのが特徴です。
通話履歴の分析や、成約率の集計といったCRM機能を持つCTIもありますが、基本的には電話以外の顧客対応はフォローしていません。
一方のCRMは、メールや郵便、訪問などあらゆる顧客対応と、総合的な顧客情報を管理するもので、さらにマーケティング支援やキャンペーン管理などの機能も備えている点で区別できるでしょう。
3-3 CRMとBIの違い
「BI」とは「Business Inteligence(ビジネス・インテリジェンス)」の略です。 企業活動の中で、各部署がそれぞれに蓄積しているあらゆるデータを統合して集積・分析し、経営戦略に活かしていく手法を指す言葉です。
CRMは、顧客に関する情報を管理するものですが、BIは顧客情報だけに限りません。
MA、SFA、CRMなどで得られたデータをすべて統合して、分析レポートを作成することができるのです。
また、CRMを導入する場合は、部署別にデータ管理することが多いようですが、BIは部署の垣根を超えて全社のデータを統合します。 そのため、部署としての戦略ではなく、経営陣による経営戦略の立案にまで役立てることができるものです。
3-4 CRMとCMS・DMPの違い
近年、CRMと似た概念として「DMP=Data Management Platform(データ・マネジメント・プラットフォーム)」というものが生まれました。
これは、「マーケティングに必要なさまざまな情報やデータを集積・管理・分析するためのプラットフォーム」とされています。
情報の管理と分析という点で、CRMと近しい存在とも言えるでしょう。
異なる点は、CRMが顧客情報を扱うのに対して、DMPはインターネットなどを通じて得られるさまざまな外部データを集めて管理・分析するということです。
例えば、自社サイトはもちろん、外部サイトの閲覧履歴や検索ワードといったウェブ上での行動履歴と、年齢・性別などの属性情報を集積し、ターゲット層の関心やニーズを分析することができるのです。
名前や連絡先などの個人情報を含まない情報でも広く集めて利用できるので、その点でも、特定の企業や個人の情報を扱うCRMとは異なると言えます。
4 まとめ
いかがでしたか?
これでもしCRMについて人から聞かれたとしても、自信を持って説明できることと思います。
では、あらためて記事の内容を振り返ってみましょう。
◎「CRM」の意味は、「顧客の情報を集積・管理し、分析して、適切な営業アプローチへと導いてくれるツール」
◎CRMの役割は、顧客情報を管理・分析することで、顧客のニーズを把握して、優良顧客へと育てること
◎CRMの主な機能には、以下のようなものがある
1)顧客情報管理・対応履歴管理
2)顧客データ分析
3)マーケティング支援(メールマガジン配信、SNS連携など)
4)キャンペーン管理
5)カスタマーサポート機能(アフターサービス、問い合わせ管理)
6)基幹システムとの連携
◎CRMの導入メリットは、主に以下の4つ
1)顧客情報を一元化・データベース化できる
2)顧客に最適なアプローチができる
3)PDCAサイクルを適切に回すことができる
4)社内業務を効率化できる
◎CRMと類似のSFA、MAとは、「営業活動のどのフェーズで利用されるか」で分けられる
あなたの会社でもCRMを活用して、営業活動の改善と顧客満足度のアップが目指せることを願っています。