「位置情報」が注目されている。スマートフォンのGPS機能を利用した「位置情報」の活用はポケモンGOの人気にもみられるように、コンシューマー向けアプリの世界で広がってきた。
「位置情報3.0」といわれる今、「位置情報」を活用したビジネスアプリの利用が企業で広がっている。そこで本記事では「位置情報」を「営業支援」や「SFA」といった顧客管理などビジネスに活用し成功させるためのポイントについて解説する。
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INDEX
1.位置情報のビジネス活用の歴史
現在の位置情報ビジネスの状況を「位置情報3.0」と大前研一氏は呼んでいる。 位置情報は、1990年代の「位置情報1.0時代」にGPS(全地球測位システム)技術の利用が中心で主にカーナビゲーションなどで活用されてきた。
そして「位置情報2.0時代」は、スマホの位置情報がゲームで活用され、「フォースクエア」や「ケータイ国盗り合戦」といった人気アプリによって広まってきた。
「位置情報3.0時代」は、「アップル社」の「iBeacon」やWi-fi測位技術の進化等を背景に、行動分析やビッグデータ活用とも相まって「位置情報」はビジネスユースに広がりを見せている。
なお技術精度の進化に関しては、2010年(平成22年)9月11日に準天頂衛星の実用試験機「みちびき」が打ち上げられ、衛星測位システムの有効性が検証されている。準天頂衛星は、2018年に4基体制でシステムが運用されることが決定され、2023年を目途に7機体制とし、都市部や山間部含めて正確な位置情報が得られることを目指している。
2.国内は2020年に62兆円市場へ
総務省は2014年「G空間×ICT推進会議報告書」で、2012年時点に20兆円だった地図情報や人の位置情報など国内位置情報ビジネスの市場規模は、2020年には約62兆円になると予測。これは、現在の日本のGDPの12~13%を位置情報関連ビジネスが占めることになる。
Googleの日本法人であるグーグル株式会社 エンタープライズ部門では、「いまや情報の80%には何らかの地理情報が付与されています」という。
位置情報ビジネスの広がりの背景として「ロケーションインテリジェンス」(LI)や「GIS」などを活用して企業のエリアマーケティング活動を後押しするツールの進化がある。これらのツールは具体的には、店舗、営業リソース、見込み客などの位置情報に応じた販売促進計画の立案に役立つ。
また、「地図」+「GPS」+「クラウドサービス」の組み合わせによるモバイルSFAやモバイルCRMで営業支援、営業業務改善、ディスパッチ業務の遂行、業務効率化などの用途の幅が広がることも期待される。 次項ではスマートフォンのGPS機能活用事例を見る。
3.スマートフォンのGPS機能のビジネス活用事例
前述のとおり仕事に関する情報の多くは地理情報、位置情報に紐づいている。これらを効率的に管理、整理、運用するために「地図」+「GPS」+「クラウドサービス」を組み合わせた、モバイルSFA、モバイルCRMを活用することは多くの企業にとって有益である。
モバイルSFA、モバイルCRMが実際企業においてどのような用途で使われ、どのような効果が上がっているかを見ていく。
ラウンダー業務を効率化
ラウンダー業務は店舗を巡回した後、情報閲覧や報告書作成の事務作業のために帰社する機会が発生することで労働時間が長くなる傾向になる。これらの課題に対して、モバイルSFAを利用することで、今まではモバイルパソコンとデジタルカメラを持って店舗間の移動をし、棚の状況を撮影して報告業務を行っていたエリアスーパーバイザーはスマホ1つで電子報告書にて情報共有が即可能となった。このことで業務効率化が大幅にアップした。
ハウスメーカーにおける写真仕分けの自動化
ハウスメーカーでは、工事現場担当者は、6~10件ほどの邸宅の工事を兼任する。工事現場担当者は、物件/工程/部位ごとに一か月あたり、1,000枚ほどの写真を撮影するが仕分け作業に膨大に時間がかかっていた。
また、営業部門、工事部門での情報の写真共有の仕組みも無かった。これらの課題に対して、アプリの簡単な操作で、物件/工程/部位を設定して工事写真を撮影するだけで、仕分け作業を自動化することができた。部門間の写真共有にも役立っている。
営業業務の効率化により、訪問件数の倍増を実現
営業マンは効率を重視するため売り上げの見込める顧客には集中するが、それ以外の顧客は手薄になる傾向がある。
これらの課題に対して見込の高い顧客の周辺顧客とその顧客との商談履歴を、営業マンに地図上で示すことで営業マンの訪問を促す機能を有した位置情報活用SFAを導入。結果として営業マンの「もう一件の訪問」を実現し、訪問件数が倍増した。これらの事例は医療業界のMRやOTC、不動産、不動産仲介業などの営業支援にも適合できる
このようにSFAや営業支援システムは営業マンの業務効率をアップさせるだけでなく、受注率アップなどの結果にも直結する成果が期待できる。
警備員の位置把握による、司令員の対応力向上
監視センターは、現場対応可能な警備員が今どこでどのような状態なのかを把握するべく、メールや電話連絡で確認していたため効率が悪かった。
このような課題に対して、スマートフォンのGPS機能を活用して警備員の位置情報を監視センターで共有することで、通報場所から最短の警備員から指示を出すことができるようになった。
さらに監視センターは、警備員の対応状況を【待機中】【移動中】【対応中】などのステータスが地図上で把握できるため、通報場所から距離が近くて対応可能な警備員に出動指示を出すことで効率化が進んだ。また通報場所までの「最適ルート」の指導にも役立っている。
保守・メンテナンス人員の管理業務工数の削減
オペレーターが作業開始、終了時刻を管理するために、保守・メンテナンス担当者は訪問先での作業開始・終了について電話でオペレーターに連絡していた。このことによって、ピーク時は電話が繋がり難くなることに加え通信費コストも大きく、オペレーターと保守・メンテナンス担当者双方にストレス及び無駄なコストが掛かっていた。
これらの課題に対して作業開始・終了時刻をスマートフォンのアプリを使って行うことで通信の必要はなくなったためコストが大幅に削減された。また保守・メンテナンス担当者の訪問先情報もGPSで取得できるため、情報の見える化によって現場のエンゲージメントが高まった。
4.位置情報活用で働き方改革を実現
位置情報を活用したSFAを利用することで、どのような「働き方改革」や時短が実現できるのかをここでは解説する。
まずは会社で「働き方改革」をする目的を定義した上で、具体的に手段としてSFAの機能を使ってどこまで営業支援や業務改善が期待できるのか考えることが重要だ。
働き方改革を実現するためには、生産性を向上させなくてはならない。生産性を向上させるとは、つまり1時間あたりの労働効率を上げることである。労働効率を上げるためには、無駄な労働時間を省くことが必要になってくる。それでは営業マンや保守・メンテナンス担当者の無駄な業務とは何だろうか?
以下代表的な例を挙げる。
- 無駄な業務
- ・交通費精算
- ・スタッフのメールやチャットなどで済む電話報告
- ・マネジメントからの業務状況の確認電話
- ・事務作業をするための訪問先からの帰社時間
これらを仮に簡素化、自動化すると以下になる。
- 改善案
- ・交通費精算→「自動化」
- ・スタッフのメールやチャットなどで済む電話報告→「ジオフェンシングなどで自動化」or「電子報告書」
- ・マネジメントからの業務状況の確認電話→「電子報告書」
- ・事務作業をするための訪問先からの帰社時間→「電子報告書」を即共有
結果として以下のような時間削減が一日の中で期待できる。
ビジネスパーソンが無駄な業務を自動化し、よりコアな業務に集中することで仕事の結果を出しやすい環境を促し、家族との時間も共有できるよう「ワークライフバランス」を取る生活の実践が可能となる。
5.成功するための3つのポイント
このような位置情報を活用したSFAを使ってビジネスを成功に導くための3つのポイントを解説する。
ポイント① 位置情報を活用する目的の把握「位置情報の必要性の有無」
営業マンの業務を見直す際に必要なことは、営業マンの行動ログなどの位置情報を取得することでどんな課題に対して効果が上がるのかについて良く考えなくてはならない。
例えば優秀な営業マンとその他の営業マンの訪問件数の行動量を取得することで、優秀な営業マンは訪問件数が多いという仮説があるのであれば、それを証明するために営業マンの商談と位置情報を取得することでエビデンスデータとしての価値がある。
また、現状どの行動にどの程度時間が割かれているのかABC分析(アクティビティベーストコスト)を行うために、実態・事実を掴む手段として行動ログを取得することもあるだろう。
このような仮説無しに単なる「動態管理ツール」として位置情報活用SFAを導入し位置情報を取得する場合は現場のエンゲージメントが著しく下がるので、注意しなくてはならない。
ポイント② 行動の分解と現状把握「業務分析に位置情報は有益か」
次に業務プロセスの分解である。例えば営業マンの行動を分解すると、移動時間、商談、提案資料作成業務、報告書作成業務、精算業務(交通費計算)となる。
外の移動が多い業務であればあるほど、位置情報を取得する必然性が高い。エビデンスデータとして位置情報が取得できるからである。
ポイント①の目的と照らし合わせて、位置情報活用によって取得できるデータが業務改善に必要かどうか詳細の検討が必要だ。
ポイント③ 現業務をSFAに置き換えた際の運用リスクの洗い出し「運用に乗るか?」
最後に業務プロセスをSFAに置き換えた際のシュミレーションをおこなう。例えば営業マンの報告書の精度を向上させるために、訪問先でチェックインをするオペレーションとした際に、訪問先で営業マンがチェックインを行わないことも考えられる。
この対策としては、ジオフェンシング機能などを活用し営業マンが顧客訪問先に近づくと自動的にチェックインができる等の機能が役立つ。
これらのように位置情報を活用したSFAを導入する際は、目的設定、範囲の決定、運用シュミレーションを行うことで、位置情報を使う必然性をチーム内で共有し、経営層からミドルマネージャー、スタッフまでが一体になってプロジェクトを推進することが重要である。
SFA導入のポイントについてさらに詳しく知りたい方は
SFA(Salesforce Automation) 導入失敗?SFA導入に絶対に失敗しないための5つのポイント をご覧ください。
6.まとめ
「位置情報」に関する潮流、用途の進化を中心に見てきたが如何であったか。
「位置情報」取得技術の向上により屋内利用の精度向上や、ビーコン利用によるポイントキャスティングのプロモーション活用など様々な用途、事例が広がってきている。
「位置情報」が身近になることで、ビジネスに関する顧客データ、営業マンの行動ログなどビッグデータが集まり、BI、AIなどで分析することでさらなる効率化や業務改善が期待できる。今後の「位置情報」の広がりに注目だ。
どのようなSFAがあるのか?詳しく知りたい方は
SFA(営業支援ツール)おすすめ比較10選! をご覧ください。